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2019年4月にスタートした「建設キャリアアップシステム」、そのメリットは?

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国土交通省と建設業界の大手団体が進める「建設キャリアアップシステム」。既に2019年1月から試験運用が始まり、4月から本格的に全国で運用が開始されました。「名前だけは聞いたことがある」という方も多いのではないでしょうか。ただ、実際どんなシステムで、どんなメリットがあるのかまでは、あまり知られていません。そこで、今回は中小企業や職人目線で、システムの概要やメリットを紹介します。

導入背景/若年層が働きたくなる業界を目指して


「建築キャリアアップシステム」とは、簡単に言えば「建設現場で働く職人や現場監督の

資格、経験、現場歴などをデータベース化

して、

ICカードで仕事履歴を蓄積

していけるようにしよう」というものです。

もともとのスタートラインは、業界全体に広がる人材不足です。現在、建設業界で働く人の数は約500万人。ピークである1997年(平成9年)から3割ほども減っています。しかも高齢化が他の業界より進み、500万人のうち、55歳以上が34%、29歳以下は約11%です。要はベテラン3人に若手1人というバランスの悪い構成になっています。

■ 建設業就業者の高齢化の進行
建設業の労働力推移引用:建設産業の現状と課題(国土交通省)より


若手が建設業に入ってこない理由、入ってきても辞めていってしまう理由は様々ありますが、「建設キャリアアップシステム」は賃金とキャリアステップの問題を改善するために構築されました。


● 建設キャリアップシステムの目指すもの


1)建設技能者は次々に異なった企業の異なった現場で経験を積んでいくため、スキルアップしても正当に賃金が上がりにくいと言われます。そこで、経験を業界統一で評価することで、スキルアップが賃金アップに繋がりやすい形に是正したいという目的があります。

2)若手が建設業を辞めた理由を聞くアンケートで、「将来のキャリアアップの道筋が描けない」という声が多く聞かれました(※)。そこで、スキルアップすればICカードの色がステップアップしていくシステムを構築し、キャリアステップを思い描きやすい業界に変えるという目的もあります。

※引用:国土交通省|平成28年度 国土交通白書|http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h28/index.html


このように業界を大きく変えることが期待されるシステムです。

仕組み/建設技能者の職務経歴をIT化


「建設キャリアアップシステム」の具体的な仕組みは、このようなものです。

「建設キャリアアップシステム」の具体的な仕組み引用:一般社団法人 建設業振興基金|システムの概要編|http://www.kensetsu-kikin.or.jp/ccus/images/news/chirashi.pdf


システムの流れを見ておきます。

(1)情報を登録


まず、働く側の建設労働者、雇う側の事業者両方が基本情報を登録します。

・職人

(所属会社が登録代行可能)


本人情報(住所、氏名、生年月日、性別、国籍)、職種、社会保険加入状況、建退共手帳の有無、保有資格、研修受講履歴、受賞履歴、健康診断受診歴の有無など

・事業者

(元請け、下請けとも)


企業情報(商号、所在地)、建設業許可情報(業種、番号、有効期間)、社会保険加入状況など

(2)カードを取得


技能や経験に応じたICカードが技能者に配られます。ゆくゆくは4種類になる計画ですが、当面は一般カードと、登録基幹技能者の資格保持者に配られるゴールドカードの2種類です。

建設キャリアアップシステムのカード引用:国土交通省(以下も同様)

(3)現場情報を登録


現場開設時、元請け企業がどんな現場か、どんな工事内容かなどを入力します。

(4)仕事内容を登録


元請け、もしくは下請け企業が、各技能者の立場、作業内容、次数などを入力します。

(5)就業履歴の蓄積


各技能者が現場入場時にICカードをカードリーダーで読み取り、現場入場実績を蓄積していきます。

就業履歴の蓄積

(6)データ利用


システムに登録・蓄積された情報は、技能者、事業者どちらも閲覧できます。

・技能者


パソコンやスマホでいつでも閲覧でき、出力・印刷も可能なので、自らの経歴を確認し、転職時などにアピールすることができます。

・事業者


自社の技能者の情報閲覧はもちろん、元請・上位事業者は自社の現場に入場中の事業者や技能者の情報を確認することができます。他の事業者は、技能者と所属事業者が認めた情報に限って閲覧できます。

現場に入場中の事業者や技能者の情報を確認

利用料/安価で利用可能


ちなみにシステムを利用する費用ですが、かなり控えめな金額です。


・技能者の初期登録料:インターネット2,500円、郵送・窓口3,500円
・ICカード:登録料に含む。紛失した場合は発送費を含めて約1,000円
・事業者の初期登録料(5年ごと)1人親方は無料、企業は資本金によって異なり、500万円未満は3,000円、以降段階的に上がり、最高は500億円以上の120万円
・カードリーダー:市販品を利用。タイプによって数千円〜数万円程度
・管理者ID利用料:1 IDあたり400円/年
・現場利用料:就業履歴回数1回あたり3円(現場に入場する人日で課金)


使うイメージは持てたでしょうか。最後にどんなメリットがあるのか、職人目線と企業目線で見ていきます。

労働者にとってのメリット

● 転職や営業に役立つ


建設業界全体の統一したデータで、自分の職歴を客観的に証明できます。公的な職務経歴書となりますので、転職時や一人親方の営業・報酬交渉などに使えそうです。

● キャリアステップの目標になる


これまで職種名でひとくくりにされていたりものが、今後は具体的な数字やレベルでキャリアステップとして設定されるので、スキルアップの目標になります。今後、下記のような4段階のステップが考えられています。保有資格と就業履歴に、各種研修参加実績や技能検定結果などを合わせて判定されることになりそうです。

建設キャリアアップシステムの能力評価基準の要素引用:一般社団法人 日本建設業連合会|建設キャリアアップシステムの普及・推進「資料2 建設キャリアアップシステムについて(国土交通省)」より|https://www.nikkenren.com/sougou/careerup.html

● 正当な賃金評価が期待できる


今後、このシステムに蓄積されたデータを基に、技能や経験に応じたきめ細かな賃金体系の検討が進むことによって、頑張っている労働者が正当に評価され、賃金アップしていくことが期待できます。

● 教育体制が充実する


今後はこのシステムの情報を元に元請けが工事会社を選定するといった動きも出てきそうです。そうすると、人材教育を進める企業が選ばれるようになるため、社員の技能を高めるための教育体制を充実させる企業が増えそうです。

● 待遇改善につながる


元請け企業は、現場に出入りする全ての下請け企業とその職人の情報を閲覧できます。社会保険や建退共など福利厚生への加入状況なども確認できますので、平成29年度以降厳しくなった「法定社会保険未加入企業の下請けからの排除」がより浸透・徹底されることが予想されます。これにより建設業で働く人すべてが社会保険に加入することとなり、安心して働ける労働環境へとつながります。

(※参考:必要な社会保険料は元請に求めることができます(国土交通省)|http://www.mlit.go.jp/common/000998178.pdf

ちなみに外国人建設労働者に関しても、今年2019年春に導入される新たな在留資格「特定技能」で働く場合、受け入れ企業はシステムへの登録が義務となりそうです。

企業にとってのメリット

事務作業の効率化

● 事務作業の効率化


システムに登録される技能者の情報は、現場入場時に作成する安全書類や作業員名簿、新規現場入場時のアンケートに記載される項目を想定して決められました。その内容が手書きでなくデータで、しかも信頼性の高い形で提供されます。そして、入退場時間管理、建退共印紙貼り付けもシステムに任せられます。当然、事務効率は高くなるでしょう。

● 自社の強みをPRできる


職人と同じように、企業も自社に所属する技能者の技能や経歴をPRできます。優秀な人材を育成すればするほど、受注機会が拡大しそうです。

● 許可申請書類の簡素化が期待できる


とかく負担になりがちな、建設業許可等の申請書類。今後、このシステムによって審査されるようになれば、申請書類作成の手間は大きく軽減しそうです。

まとめ


2019年4月から正式スタートした「建設キャリアアップシステム」について見てきました。国交省は初年度である2019年度中に建設技能者100万人、5年後の2023年には全ての建設技能者、約330万人の登録を目指しています。システムの運営主体である建設業振興基金によると、1月7日時点で技能者は約1万7千人、事業者は約1万事業所が登録しています。

業界の中には、「せっかく育てた職人をゼネコンや競合他社に引き抜かれるのではないか」などという不安もあるようですが、それ以上にメリットの大きなシステムだと感じます。

現在、システムは義務ではなく任意になっていますが、曖昧な形で推進すると、住基カードやマイナンバーカードのように、うまく活用しきれないということになりかねません。ぜひ利用を義務化して、建設業界全体が、働きやすく、風通しがよく、経験や努力が報われる業界になってほしいと願っています。

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