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「スーツに見える作業着」で現場技術者の応募数が3倍に!オアシスライフスタイルグループに学ぶ「建設業界で新規事業を成功させる方法」

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2018年3月、「世界初のスーツ型作業着」という商品を発売して、注目を集めたオアシススタイルウェア。もともとマンションの給水管洗浄に特化したニッチなトップシェア企業が、新規事業として設立した会社です。最初は悩みのタネだった現場技術者の若手採用対策のための制服として開発し、それが新規事業になり、人材採用も成功したという好循環を生んだそうです。この記事では、建設業界にあって複数の未経験の新規事業を成功させている同グループのビジネス開拓術をご紹介します。

株式会社オアシススタイルウェア 広報グループの岩見祐香さん▲ 移転したばかりの新オフィスで取材に答えてくださった、株式会社オアシススタイルウェア 広報グループの岩見祐香さん。「まだ新卒1年目なのですが、本当に任せてくれる会社です」。若手を採用するには重要な要素です

水道工事会社が台湾のタピオカミルクティーのカフェを開業

オアシスライフスタイルグループは、もともと代表取締役の関谷有三氏(42)が家業である宇都宮の水道工事会社から独立し、起業した会社です。

『通常の水道工事会社は、何か不具合が起こってから対応します。一方で当社は竣工から10〜20年ほど経過したマンションの給水管を、不具合が起こる前に洗浄・補修します。ニッチな分野ながら、シェアは約60%を占めています』(岩見さん)

※以下『』内は岩見さんによるコメントですオアシスソリューションのサービスサイト▲水道工事部門であるオアシスソリューションのサービスサイト。は、老化した給水配管に汚れや水垢が付着する問題を、独自の洗浄技術で解決し、現在全国に7拠点を展開|https://solution.oasys-inc.jp/

大手マンション管理会社との提携などもあって事業が順調に伸びていた同社は、海外進出を考え、関谷代表がアジアを巡ったそうです。

『関谷が台湾に訪れた際、たまたま立ち寄った台湾カフェに一目惚れして、どうしても日本に持ってきたいと言い出しました』

本業とはまったく違う分野で、未経験でもあり、社内は反対の声が大きかったそうです。当時は男性の現場技術者が多かったそうなので、カフェはあまりに異質で、反対して当然かもしれません。しかし関谷代表が押し切る形で交渉を進め、2年かけてこだわりの強い台湾のオーナーを口説き落とし、海外事業の権利を獲得しました。

そして、タピオカミルクティーをウリとする、台湾カフェ「春水堂(チュンスイタン)」を2013年にオープンさせています。

『2018年に起こった空前の台湾ブームもあって、売り上げは水道工事事業に並び、当グループの2つめの柱になりました。2018年3月には、姉妹ブランドとして、テイクアウト専門の「TP TEA(ティーピー ティー)」もオープンしました』

「春水堂」の公式サイト▲「春水堂」の公式サイト。タピオカミルクティーの元祖で、全国12店舗を展開。姉妹店の「TP TEA」は東京に3店舗|https://www.chunshuitang.jp/

ちなみに水道事業の海外進出は台湾ではなくシンガポールで実現しましたが、現在は休止しているそうです。その代わり、台湾カフェが好調。新規事業は本当に予測が難しいものです。

飲食系事業があると女性や若手が採用しやすくなるため、人材面での貢献もありそうです。

社内プロジェクトから生まれた作業着スーツ

オアシスグループが2016年に10周年を迎えるに当たり、何か新しいことをやろうと社内で各部署からメンバーが集まり、プロジェクトが立ち上がりました。そして当時悩みのタネだった「水道事業の若い現場技術者の採用難」に取り組みました。

『まず見た目を格好良くして、3Kのイメージを払拭しようと、作業着を改良することになりました。最初はデニム地やハーフパンツなど、カジュアルウェアや作業着の枠の中で考えていたのですが、機能性と格好良さを両立させることができませんでした』

そんな時にヒントになったのが、技術者の「営業はいいよなぁ、スーツだからそのままデートに行けて」という言葉でした。技術者は会社から支給された作業服で仕事をしますが、そのまま飲み会やデートに行きにくいため、私服を持ってきている人も多かったそうです。

『そこで、現在当社の代表を務める女性の中村が、「私がデートしてもいいと考えると、ジャケットぐらいは着てきて欲しいし…」と考えていった末に、スーツ型作業着のアイデアに至りました。ここまでが本当に苦労しました』

デートにも着て行ける作業服

もうひとつの苦労は、生地選びだったと言います。

『当社はアパレルの経験がなかったので、関谷の知り合いのアパレル会社の方に「パターンとは何か」といった基礎から教えてもらいました。そして、様々な生地会社などから100以上の生地を取り寄せて強度や耐水性、速乾性などを試しました。生地が決まると、普通は2〜3回と言われるサンプル製作を5〜6回も行い、ポケットの位置やサイズなども調節し、少しずつ作り上げていきました』

アパレルのプロであるセレクトショップでさえ、オリジナル商品を製作する際には、OEM会社に丸投げの形で依頼することも多いものです。ここまでこだわって手作りするのは珍しいように見えます。

『素人が失敗しながら進めていくのは効率が悪いように映るかもしれませんが、当初は事業化する計画ではなかったので、自分たちで作り上げていくことに意味がありました』

ある意味、高校の文化祭の模擬店のようなノリなのでしょうか。ただ、その進め方は事業化後の大きな武器になっているはずだと思います。100以上の生地をある意味闇雲に集めたり、サンプルを何回もつくることで、ノウハウが自社に溜まっていったはずだからです。もし最初から事業化が決まっていたら、OEM会社に頼み、完成までのスピードは速い代わりに、社内に生地や製造などの知識は残らなかったでしょう。

耐水性・速乾性に優れる「スーツ型作業着」

こうしてできあがった「WORK WEAR SUIT」。スーツショップやカジュアルショップなどで流行の機能性スーツとは違い、しっかり作業に使えます。様々な体勢にもフィットするストレッチ性があり、多少の水は弾き、工具やデジカメを収納できる大型のチャック付きポケットを備えています。そして365日洗濯機でガシガシ洗えて、形状記憶機能でアイロンいらず……。作業着と考えると当たり前ですが、スーツと考えれば画期的です。

WORK WEAR SUIT▲ワークウェアスーツの機能の数々。「世の中のウォッシャブルスーツや機能性スーツよりも、作業着としての機能が高いことは自信を持って言えます」(岩見さん)

『私も今、ワークウェアスーツの上下を着ていますが、動きやすくて快適です。しかも洗濯機でTシャツ感覚で洗えて、2〜3時間ぐらいでしょうか、Tシャツより速く乾きます』

普段作業着を着ている技術者も加わって開発しているだけに、こだわりポイントもたくさんあります。たとえばジッパー付きポケット。デジカメや工具、ネジなどをいれてかがんでも落ちないようにという配慮です。

最初は社内で「以前の作業着に戻してほしい」と不評

開発陣が自信たっぷりだったスーツ型作業着は、さっそく水道事業の現場技術者の制服として使用されました。しかし、最初は不評で、「以前の作業着に戻してほしい」とまで言われたそうです。

『「以前の作業着なら髪型はボサボサでもいいし、多少無精ひげがあっても違和感がないのに、スーツ型になってからは、髪をセットしてひげをきちんと剃らないと変なので、身だしなみを整えるのが大変だ」という声が多かったんです』

現場技術者の以前の作業着▲現場技術者の以前の作業着。髪がボサボサの場合は帽子で隠してしまっていたそうです作業着スーツ▲作業着スーツに変わってからは、この姿のまま作業をしています

しかし、お客様の声は正反対で、CS(顧客満足)調査のアンケートでも以前の作業着より好意的な声が多く寄せられました。特に主婦の方がひとりになる個人宅での作業時にはワークウェアスーツ姿が人気だそうです。

「以前の作業着では少し怖い感じがありましたが、新しい作業着は清潔感があって安心できます」「スーツ姿で汚れる作業をしている姿を見ると、申し訳ない感じさえありました」

などの声が多かったそうです。

クライアントの「欲しい」に応えて商品化へ

作業着スーツに好意的だったのは、お客様だけではありません。管理会社などのクライアント企業からも、「うちの会社でも使いたい」「個人的に自分で買いたい」などの声が上がりました。

そこで、新会社を設立し、2018年の3月に一般販売を始めています。それまでにきちんと生地メーカーや工場との関係性をつくっていたからこそできたことでしょう。

スーツに見えますが、作業着です。▲とても作業着には見えないビジュアルは新鮮で、発売以来多くのメディアにも取り上げられ、広告費をかけずに大きな宣伝効果が得られたそうです

「スーツに見えますが、作業着です。」というキャッチフレーズで登場した「ワークウェアスーツ」。SNSなどで批判の声もたくさんあったそうです。

『賛否両論でした。発売開始時に、服装が変われば意識が変わるというコンセプト動画を公開したのですが、「作業着をなめるな」という声で炎上状態になりました。ただ、一方で「こんな商品を待っていた」という好意的な声も多かったですね』

それから約1年、上下で3万円と、作業着としては高額にも関わらず、販売数は5,000着以上、売上総額は1億円を超えたそうです。

制服のような作業着として採用した企業は140社を超えたといいます。1社で100着以上購入した会社もあるそうです。建設会社や管理会社だけでなく、官公庁、農業など、幅広い業種で採用されています。

三菱地所のマンション管理部門の作業服▲ワークウェアスーツを制服として導入した、三菱地所のマンション管理部門の例。以前は高級マンションなどで「あの作業着はなんとかならないのか」という声もあったそうです

同社が凄いのは、ユーザーをしっかり向き、ユーザー目線で新しい施策を形にしてしまうことです。しかも超スピードです。

まだ発売から1年しか経たないというのに、

・女性向けもほしい → 女性向けワークウェアスーツを開発・まず試してから導入するか決めたい → 月3000円〜で借りられる月額定額制のサブスクリプションサービスを開始・作業性よりファッション性の高い作業着スーツがほしい → 新ブランド「YZO」「MNT」を立ち上げ・買う前に見てみたい → ショールームやポップアップショップを開設

など、凄まじいスピード感です。

ポップアップショップ▲新オフィスにはショールームも併設。百貨店でのポップアップストア(期間限定ストア)なども開設しています

ちなみに、作業着スーツの当初の目的であった現場技術者採用に関しては、導入後の応募者数が3倍!に急増したそうです。人材採用を目的に制服として導入した企業からの評判も上々だと言います。

作業着スーツ自体も魅力ですが、作業着スーツの開発を未経験の社員に任せ、アイデアを出した社員に抜擢するベンチャー感覚が新卒学生や転職希望者の心をつかんだのではないでしょうか。

建設現場でのスーツ型作業着▲作業服をワークウェアスーツに変えただけで、建設現場の印象もガラリと変わります!ごみ収集員がワークウェアスーツを着ると▲ゴミ収集員のユニフォームに採用すれば、自治体のイメージ向上につながりそうです農家の作業着もスーツで▲農業の後継者不足にも一石を投じるかもしれません

新規事業を成功させるには「3年後を考える」

取材を通じて感じたのは、事業設計の絞り込み方が素晴らしいということです。水道工事全般ではなく、築古マンションの給水管の検査と洗浄という予防工事に絞る大胆さ。しかも老朽化が進むという日本の未来も見通しています。

作業着スーツも、正統的なスーツを着る人が減り、普通の作業着では恥ずかしいと感じる人が増えた今だからこそ、高額でも一定のニーズがあるのでしょう。

この先読みはどうやって行っているのか、関谷代表のブログにヒントがありました。

「思考の中心はいつも3年後におく。(中略)10年後をイメージしつつ、3年後の長期の戦略、1.5年後の中期の打ち手、3ヶ月後の短期の指示、このような長中短期スパンを同時進行で考え続けてます」

(引用:OASYSの社長・関谷有三氏のブログ|https://ameblo.jp/oasys-inc/ )

簡単にできることではありませんが、新規事業を成功させるひとつの方法と言えそうです。

新規事業をお考えの会社は、ぜひ同社のストーリーを参考にしてください。採用に困っている企業は、ワークウェアスーツの導入を検討してみるといいかもしれません。11着以上ならボリュームディスカウントもあるそうです。

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